アルフォンス・ミュシャ
アール・ヌーヴォー様式を代表する巨匠。草花をモチーフとした幾何的な文様や、曲線を多用した平面的で装飾的な画面構成など典型的なアール・ヌーヴォー様式と、モデルの女性など描く対象の個性や特徴を的確に掴みながら、視覚的な美しさを観る者に嫌味なく感じさせる独自の対象表現を融合させ、数多くの商業用ポスターや挿絵を制作。
画家がパリ時代に手がけた諸作品は当時、大流行となり、画家(作家)として確固たる地位を確立。
現在でもアール・ヌーヴォー様式の代表格として広く認知されている。
黄道十二宮
本作は印刷業者であるシャンプノアの依頼により制作されたカレンダーの意匠が基となった作品で、≪黄道十二宮≫が意匠のモチーフとされている。本作は画面中央に天使階級第二位に位置する智天使ケルビムが配された特別仕様版(装飾パネル)であり、ミュシャの代表作として必ず名を挙げられるほど著名な作品としても知られている。
本作に描かれる智天使ケルビムはほぼ真横から捉えられており、顔面部分のみが写実的に、髪の毛や髪飾り部分はやや単純化された表現にて描写されている。さらにその周囲へは天球上における太陽の(見かけ上の)通り道である≪黄道≫を12等分して、左から牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座と十二星座が当てはめられており、意匠として大変素晴らしい調和を生み出している。
そして画面全体はアール・ヌーヴォー様式の典型となる曲線を多用した植物的モチーフに彩られ、観る者に心地良い印象を与えることに成功している。